こんにちは。司法太郎です。
今日は、民事訴訟法の講義を受けていて、思わず手を止めてしまった出来事について書いてみようと思います。テーマは、「反訴」と「占有訴権」、そして、最近何かと話題になる生成AIの話です。
反訴。
民事訴訟法を勉強していると、避けて通れない概念です。原告の請求に対して、被告が別個の訴訟物について請求を立てる。条文としては理解していても、いざ具体例になると、頭の中が一瞬フリーズすることがあります。
その日も、そんな講義の一場面でした。
講師の先生が、
「反訴というのは、あくまで別の訴訟物なんですよ」
と説明したあと、具体例として挙げたのが、民法で出てくる「占有訴権」でした。
占有訴権。
……えっと、なんだったっけ?
聞いたことはある。民法のどこかでやった記憶もある。でも、細かい要件や趣旨が、すぐには頭に浮かんでこない。
こういう瞬間、受験生はだいたい二つに分かれます。
そのまま聞き流して、「あとで復習しよう」と思うか。 それとも、不安になって、その場で立ち止まるか。
この日は、後者でした。
講義動画を一時停止して、パソコンを開きます。そして、検索窓に打ち込んだのが、
「占有訴権 反訴として」
という二つのキーワード。
すると、検索結果の上の方に、AIがまとめた回答が表示されました。最近では、もうおなじみの光景です。
その回答が、次のようなものでした。
「占有訴権(占有の訴え)は、本権(所有権など)に基づく防御方法としては使えませんが、本権に基づく『反訴』として提起することは可能です。」
……う〜ん。
意味は、分かる。
言いたいことも、何となく分かる。
でも、日本語として、どうにも引っかかる。
しばらく画面を見つめてから、心の中でツッコミを入れました。
いや、それだと主語と目的語の関係がおかしくないか?
占有訴権が「本権に基づく反訴として提起される」って、どういうことだ、と。
もしこれが、
「占有訴権(占有の訴え)に対して、本権(所有権など)に基づく防御方法は使えませんが、本権に基づく『反訴』として提起することは可能です。」
だったら、まだすんなり理解できます。
つまり、占有の訴えに対して、
「俺が所有者なんだから、お前の占有は無効だ」
という形で抗弁することはできない。でも、
「いや、この土地は俺のものだ」
という所有権に基づく請求を、反訴として別に立てることはできる。
こういう整理です。
法律を勉強している人間からすると、ほんの一言、助詞や修飾関係がズレるだけで、意味がひっくり返りかねない。だからこそ、余計に違和感が際立ちます。
この一件で、改めて思いました。
やはり、法律分野における生成AIの活用は、まだまだ発展途上だな、と。
最近は、「リーガルテック」「AIが法律を変える」など、景気のいい言葉をよく耳にします。確かに、条文検索や判例検索、要約といった分野では、AIはすでに強力な道具になっています。
でも、法律の文章というのは、単純な日本語の集合体ではありません。
主語と述語の関係。 修飾語がどこにかかるのか。 能動態か、受動態か。
それらが、独特の論理構造で絡み合っている。その微妙な相関関係を、完全に理解して文章を生成するのは、まだ難しい。
そもそも、ここには別の問題も絡んできます。
非弁行為。
弁護士法72条が定める、「報酬を得る目的での法律事務の禁止」です。
仮に、AIがどれだけそれっぽい回答を出してきたとしても、それをもって「法律相談に答えた」と評価されるような使い方は、簡単には許されない。
医療の世界も同じです。
AIが症状を入力すれば、それなりに的確なコメントを返してくる時代になりました。でも、それを理由に「じゃあ医者はいらないよね」とはならない。
結局のところ、最終的な判断や責任は、人間が負う必要があります。
そう考えると、これからもしばらくは、法律家が人間として対応する時代が続くのでしょう。
とはいえ、生成AIを全否定する気はありません。
正直に言えば、
URLのリストをずらっと並べられるよりも、 文章で概略をまとめて返してくれる方が、
はるかに便利です。
今回の回答も、日本語としては引っかかりつつも、「ああ、そういう論点の話なんだな」という方向性は掴めました。ゼロから調べるよりは、ずっと効率がいい。
考えてみれば、人間同士の会話だって、完璧ではありません。
主語と目的語を入れ替えたり、能動態と受動態がごちゃっとなったり。それでも、私たちは文脈を読んで、適当に補正しながら理解しています。
生成AIに対しても、しばらくは同じ付き合い方が現実的なのかもしれません。
「そのまま信じる」のではなく、 「違和感を感じたら立ち止まる」
その前提で使えば、十分に役立つ道具です。
反訴の講義をきっかけに、占有訴権を復習し、ついでにAIの限界についても考えることになった一日。
受験勉強というのは、こういう寄り道があるから、案外飽きずに続けられるのかもしれません。
さて、講義動画を再開します。
今日はこのあたりで。

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